Patent Compass | KF Researchお問い合わせ
白い実験台に並べた平たい電池セル

電池

トヨタは全固体電池に本気なのか

全固体電池の特許1万83件を数えて、トヨタの位置を確かめました。

広告本記事にはアフィリエイト広告を含みます。

この記事の要点

  • 日本で出された全固体電池の特許1万83件のうち、トヨタは1,811件で1位でした。
  • トヨタの件数は410件から646件へ増え、分野に占める割合は28.4%から15.8%になりました。
  • 同じ10年で、この分野に出願した会社は262社から544社になっています。

全固体電池は、いまの電池で液体になっている部分を固体に置き換えたものです。燃えにくく、充電を速くでき、薄く重ねられると期待されています。トヨタは2027年から2028年の発売を予告しています。

日本で出された全固体電池の特許は1万83件でした。そのうち1,811件がトヨタです。分野全体の18%にあたり、2位のパナソニックIPマネジメントの3.2倍です。2005年以降は、どの5年をとっても1位でした。

下がった割合と、増えた件数

ところが、分野に占める割合は下がり続けています。2010年からの5年は28.4%、直近の5年は15.8%です。件数のほうは、同じ10年で410件から646件へ増えています。

図1|全固体電池の出願件数と、出願した会社の数

図1|全固体電池の出願件数と、出願した会社の数
全固体電池の特許出願を5年ごとに合計した件数です。2010〜14年は1,443件(うちトヨタ410件・28.4%)、2015〜19年は2,477件(うちトヨタ585件・23.6%)、2020〜24年は4,088件(うちトヨタ646件・15.8%)。出願した会社は262社、369社、544社と増えました。国際出願から日本へ入ってくる分は2023〜24年がまだ届いていないので、いちばん下の棒はこの先さらに伸びます。トヨタの出願は98%以上が日本への直接出願なので、その分の目減りはほとんどありません。日付は出願日です。

元データ(CSV)をダウンロード図の原寸(SVG)

割合が下がったのは、まわりが伸びたからでした。この分野に出願した会社は、262社から544社になっています。

数え方で変わる直近の年

特許が日本に出てくる入口は2つあります。特許庁へ直接出すものと、国際出願として出して2年半ほどかけて日本に入ってくるものです。後者は遅れて届くので、直近の年はまだ数が揃っていません。

そのまま数えると、この分野は2022年を山に減って見えます。届き終わる直接出願だけで数え直すと、2024年の539件が過去最高でした。

材料が決める顔ぶれ

なぜ、これだけの会社が入ってこられたのか。固体電解質という材料から見ていきます。

液体の電解質は電極のすみずみまで自分で染み込みますが、固体は押し当てるしかありません。電池は充電するとふくらみ、放電すると縮みます。固体の電解質がその動きについていけないと、すきまや割れができて電気の道が切れます。

固体電解質には、大きく2つの路線があります。硫化物系はやわらかく、電極が動いても密着を保ちます。酸化物系はセラミックで硬く、熱にも水にも強い一方、電極の動きには追従しにくくなります。

図2|固体電解質の材料系ごとに、出願が多い会社

図2|固体電解質の材料系ごとに、出願が多い会社
固体電解質の材料系ごとに、出願件数の多い会社を並べました。硫化物系(2015〜2024年の出願1,177件)はトヨタ271件、出光興産119件、富士フイルム77件、古河機械金属72件。酸化物系(同257件)はトヨタ42件、日本特殊陶業25件、太陽誘電20件です。材料系は発明の名称、英文抄録、分類コードに書かれているものだけを拾っており、書いていない出願は数に入っていません。硫化物系だけ判定に使える手がかりが1つ多いため、2つの件数を比べることはできません。模式図で、道の長さや札の大きさに意味はありません。

元データ(CSV)をダウンロード図の原寸(SVG)

図に並ぶのは、電池メーカーより材料メーカーです。2015年からの10年では、硫化物系1,177件のうちトヨタが271件で23%を占めます。次に多いのは出光興産の119件で、2023年に両社は提携しました。

酸化物系257件でもトヨタが42件で最多ですが、続くのは日本特殊陶業と太陽誘電です。材料系が変わると、上位に並ぶ会社も入れ替わります。

20年で二度入れ替わった用途

ここまでは出した特許の話です。最後に、権利になった特許を見ます。トヨタの登録特許9万4千件のうち、発明の名称に用途を書いているものを取り出しました。

図3|トヨタの登録特許に書かれた用途の移り変わり

図3|トヨタの登録特許に書かれた用途の移り変わり
トヨタが権利を得た特許94,428件(公報の発行年1994〜2026年)のうち、発明の名称に用途を書いている12,615件の中での構成比です。エンジン・排気向けは1994〜96年の12.2%から、2022年以降は1.3%へ下がりました。燃料電池向けは2004〜2012年に5.7%で立ち上がり、そのとき充電する電池(二次電池・蓄電池など)は1.5%で、燃料電池の4分の1ほどでした。2022年以降は充電する電池が7.1%となり、燃料電池の5.6%を初めて上回っています。横軸は各年代の中央の年で、年代の幅は3年から10年までまちまちです。名称に用途を書く習慣そのものが薄れている(18.4%から9.5%へ)ため、登録件数に対する比ではなく、用途を書いた特許の中での割合で見ています。

元データ(CSV)をダウンロード図の原寸(SVG)

エンジンと排気まわりは、1990年代半ばの12.2%から直近は1.3%まで下がりました。2004年からの区間で燃料電池が立ち上がったとき、充電する電池はその4分の1ほどでした。直近ではその順番が入れ替わり、充電する電池が7.1%、燃料電池が5.6%です。

エンジンから燃料電池へ、燃料電池から充電する電池へ。用途の主な書かれ方は、20年で二度入れ替わりました。

独占から競争へ

10年前、この分野の28.4%はトヨタ1社の出願でした。いまは544社が出願しています。

トヨタは1位のままですが、1社で決まる分野ではなくなっています。

データ:特許庁「特許情報標準データ」「整理標準化データ」(2026年2月28日時点+週次差分2026年8月19日まで)。数える対象は、分類コードと発明の名称の両方で拾い、固体電解質型燃料電池を除いた1万83件です。日付は出願日。図3だけは登録された特許の公報発行年で、発明の名称に用途を書いているものの中での割合を見ています。

発売の予告(2027年から2028年)と出光興産との提携は、両社の公表によります。提携や事業の記録は特許データに入っていません。

数え方と限界はデータについてにまとめています。

データについて