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紙の上に置かれた粘着テープのロール

材料

粘着テープの技術はどこで使われているか

粘着テープをつくる技術が、ほかの業界でどれだけ使われているかを数えました。

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この記事の要点

  • 登録された特許を34業界に割り、重合をやっている件数を数えました。
  • 多いのは高分子素材の33,193件、塗料・接着剤の9,069件、粘着テープの5,140件です。
  • 半導体・電子部品は割合こそ1.1%ですが、件数では2,339件ありました。

粘着テープは、セロハンテープだけのものではありません。スマートフォンの画面の固定にも、自動車の配線の結束にも使われています。

その粘着テープをつくる技術が、ほかの業界でどれだけ使われているのか。登録された特許を34業界に割って数えました。

粘着テープができるまで

図1|粘着テープができるまでの5工程

図1|粘着テープができるまでの5工程
粘着テープの開発工程です。①粘着剤の設計(アクリルかゴムか、樹脂と架橋剤の配合を決める)→②機材の選定(基材と、塗工機・乾燥炉を選ぶ)→③塗工方法の検証(方式と塗る量を決めて、むらなく塗る)→④乾燥方法の検証(温度と風で溶剤を飛ばし、架橋させる)→⑤後工程(数日ねかせ、切り分けて、粘着力を試す)。模式図で、装置の大きさや工程の長さに意味はありません。

図の原寸(SVG)

工程は5つです。粘着剤を設計し、基材と装置を選び、塗り、乾かし、切り分けて試験します。

性能を決めるのは、最初の粘着剤の設計です。どのくらいの力でくっつけるのか、何に貼るのか、はがす前提かどうかが、ここで決まります。

重合という技術

粘着剤の設計で問われるのが重合です。モノマーという小さな分子をつないで、ポリマーという長い鎖をつくる反応をいいます。

つなぎ方には振り幅があります。どのモノマーをどの比率で使うか。どれくらいの長さの鎖にするか。鎖どうしをどれだけ橋渡しするか。

狙った性能から逆算してレシピを組み、反応を制御して現物にします。これが重合という技術の中身です。

業界別に見た重合の件数

図2|業界別に見た、重合をやっている特許の件数

図2|業界別に見た、重合をやっている特許の件数
重合をやっている特許の件数です(対数軸)。件数の多い上位15業界を並べました。高分子素材(樹脂・ゴム)33,193件・20.2%、塗料・接着剤・機能性化学9,069件・21.6%、粘着テープ・粘着シート5,140件・35.0%。半導体・電子部品は2,339件で、割合は1.1%と低いものの、業界の公報数が203,383件と桁違いに多いためこの件数になります。割合は「その業界の公報のうち重合をやっているものの割合」で、1業界2,000件の標本からの推定です。図と本文の割合は、CSVの値を小数第1位で丸めたものです。割合が小さい業界ほど件数の誤差は大きくなります。

元データ(CSV)をダウンロード図の原寸(SVG)

上位は化学の業界が占めました。高分子素材が33,193件、塗料・接着剤・機能性化学が9,069件、粘着テープ・粘着シートが5,140件です。高分子素材や塗料・接着剤の業界にも、重合を扱う特許が多く出ています。

目を引いたのは半導体・電子部品です。重合をやっている公報の割合は1.1%と低いのですが、業界の公報数が桁違いに多いため、件数では2,339件になります。

粘着剤とフォトレジスト

半導体の回路は、レジストという液体でシリコンウエハの上に描かれます。光が当たると薬品への溶けやすさが変わる樹脂を、溶剤に溶かしたものです。

図3|フォトレジストの使われ方とはたらき

図3|フォトレジストの使われ方とはたらき
フォトレジストの模式図です。上段(使われ方)は工程で、ウエハを高速で回しながらレジストを垂らして均一に塗り広げ、マスクを重ねて光を当て、現像液で洗います。下段(はたらき)は断面で、光が届いた部分だけが現像で流れ落ち、残ったレジストが下地をエッチングから守り、最後にレジストを除くと回路の形が残ります。塗る厚さや装置の比率は実際のものではありません。

図の原寸(SVG)

ウエハを高速で回しながらレジストを垂らし、均一に塗り広げます。そこにマスクを重ねて光を当て、現像液で洗うと、回路の形が残ります。

レジストの性能は3つで測ります。少ない光で反応するかという感度、どこまで細い線を分けられるかという解像度、線の縁のガタつきを指すラフネスです。どれかを伸ばすと別のどれかが落ちる関係にあり、どれを立ててどれを譲るかを決めるのが設計の仕事です。

粘着剤にも同じ形があります。柔らかくすれば触れた瞬間のくっつきは増えますが、ずれずに支える力は落ちます。鎖どうしの橋渡しを増やすと、その逆になります。

粘着テープフォトレジスト
材料の設計モノマーの組み合わせ、鎖の長さ、鎖どうしの橋渡しの多さポリマー骨格、保護基、光酸発生剤
塗る基材への塗工ウエハへのスピンコート
固める乾燥プリベーク
3つの性能タック/接着力/保持力感度/解像度/ラフネス
決めること性能の釣り合いをどこで取るか同じ

塗って、溶剤を飛ばして固める、という工程の並びも変わりません。

レジストと周辺材料の主な企業

フォトレジストは、世界で使われる量の多くを日本の企業がつくっている分野です。表に出てくるArF・KrF・EUVは、回路を焼くときに使う光の種類です。EUVがいちばん新しく、細い線を描けます。

企業主な領域
JSRArF、EUVレジストの大手
東京応化工業KrFからEUVまで幅広く展開
信越化学工業KrF、ArFレジストを展開
富士フイルムレジストに加え現像液など周辺技術も保有
住友化学幅広く展開

レジストの中に入る成分や、隣り合う膜をつくる会社にも、同じ技術が要ります。

企業主な領域
東洋合成工業光酸発生剤(PAG)の主要メーカー
大阪有機化学工業レジスト用モノマー(アダマンチル系など)
丸善石油化学レジスト用ポリマー原料
日産化学反射防止膜(BARC)、ハードマスク
三菱ガス化学、ADEKA各種材料・薬液

技術を言い換える

数えて分かったのは3点です。粘着テープの中心にあるのは重合であること。高分子素材や塗料・接着剤の業界にも、重合を扱う特許が多いこと。半導体材料とは、設計の考え方の形が重なること。

「粘着剤を配合する仕事」を「材料の釣り合いを設計する仕事」と言い換えると、当てはまる業界の数が変わります。件数は、その言い換えが成り立つかどうかを確かめる材料になります。

このうち富士フイルムについては、写真から半導体材料へ移った道筋を別の記事で11万件を数えました。

データ:特許庁「公報全文データ」(登録公報・登録日2011年以降)。特許のIPCで産業全体を34業界に割り(1件1業界・全IPCの票方式)、1業界あたり2,000件の標本を読んで重合の有無を判定しました。重合の判定は8項目(溶液/乳化/懸濁/塊状/光/リビングラジカル/連鎖移動剤/重合開始剤)が本文に3回以上、または請求項に出たものです。

企業の一覧と、フォトレジストを日本の企業が多くつくっているという記述は、各社の公開情報によります。特許の集計からは出していません。

数え方と限界はデータについてにまとめています。

データについて